てれビ～ム弱者

第二次大戦中、日本の船艦「雷・いかずち」の艦長が、沈没した英国船艦の漂流している422人の兵士を救った話で、側隠の情やみがたくとの言葉だった。

この話は戦時中ｆｒもあり、敵軍を救助した行為であって、上官の南雲中将が艦長をかばって秘密に処理した為長く表にでなかったという。

後に助けられた英国少尉はその恩を忘れず英国の外交官となり、自伝を出した事で表面化した。そしてその英国紳士は艦長の墓参りに来日するという美談で。

戦争を美化するつもりは全くないが、こういう優れて仁の心を忘れぬ人をサムライと呼ぶんだろう。戦時中の資料など読むとこういう話は多く、残酷な戦況の話よりも心に沁みるのよね。

側隠（そくいん）の情っていうと馴染みが無いかもしれないけど、武士道の教えの中に示されている、平たく言えば思い遣る心なのね。

「惻」は、同情し心を痛める意。「隠」も、深く心を痛める意。人が困っているのを見て、自分のことのように心を痛めるような、自他一如（いちにょ）の心もちを「惻隠の情」と呼んだの。

「思いやりの心」の意味でも、それだけでは十分に表せないもっと深い情愛を満たす言葉。

元は中国の古典、孟子の言葉から来ている。孟子らしい「性善説」に繋がっていると思うが、本家では情ではなくて心になっていて、「惻隠の心は仁の端なり」とある。

その意味は、思いやりの心は「仁」という大道の端緒で。「四端の説」の第一歩だ。

他にも対になってる「羞悪の心は「義」の端なりって言葉があって、仁義っていう言葉はここから派生してるのね。

辞譲の心は「礼」の端なり。是非の心は「智」の端なり。人この四端あるは、猶お其の四体あるがごとし」って続いているの。

武士道に於いてもその真骨頂は、「惻隠の情」にありとも言われるんだけど、武士道が常に目指したものは、｢弱者をいたわる思いやりの心」であったと武士道研究の書にもあるの。

そうしてその側隠の情は、寺子屋教育などで広く町人の中にもあって、江戸の十育の中にも示されていた。

自然に対する感受性、無常観、もののあわれ、美的感受性や情緒など日本人特有の感性によって育まれた感性。

慈愛、誠実、忍耐、正義、勇気、惻隠（そくいん）や恥などがあって。それは一定の精神の形として、長く日本人の行動基準、判断基準となってきたんだよね。

江戸時代、武士は、権力と教養はほぼ独占していたけれど、まるっきり金は持っていなかったし、商人ですら「金持ちであること偉いことに関係ない」という意識があった。

日本の文化や文学、そして、このような精神性の高さは欧米人にとって驚きであって、日本が品格ある国家だったからこそ、開国時にも欧米列強の植民地にならずにすんだ側面があるんだろうと思われる。

けれど今や、日本人古来の普遍的価値を失いかけている。いやもう失っているのかも知れないが。

市場経済による弱肉強食の世界だからこそ、「敗者への共感」「劣者への同情」「弱者への愛情」という『惻隠の情』が、大切なんだろう。

日本は、金銭至上主義を何とも思わない国々とは一線を画して、国家の品格をひたすら守ること。「時間はかかるであろうが、この世界を本格的に救えるのは、日本人しかない」と新渡部稲造もその著書の中で述べてている。

右翼を標榜する人は当然読んでいるだろうけれど、そういう武士道を日本の精神規範として愛するので。

やたら敵を作り上げて、戦争だ血を流せなどを勇気だと思い違いをしてるアホにはうんざりするのである。