爆弾 走れ！家族の好奇心！

「あなたも、わからない人だな。言ったじゃないですか、人類を救うためだって。人類はね、地球にとっての癌細胞なんです。地球の恩恵を受けているくせに、自らの快楽や欲のために地球を滅ぼそうとしている。僕が何もしなくたって、あと何十年かすれば、地球を道連れにして自滅しますよ。いや、もっと早いかな。そんなことにならないよう、今のうちに何とかしようとしているんですよ。科学を過信して、驕り高ぶっている今の人間には、生半可なことでは目は覚めないでしょう。それに、今なら自然や他の動物の被害も最小限でくい止められますからね」

「ふざけないで！」

　留美の叫び声が、その場の空気を切り裂いた。津村に対して動じることなく淡々と応じていた神人も、この声にはピクリと眉が動いた。

「それは、神人君の言うことにも、一理あると思うわ。だけど、だからといって、大勢の人間を殺してもいいってことにはならないでしょ。人間にもね、立派な人は沢山いるのよ。こんなことをしなくても、平和的に解決する方法はいくらでもあるはずよ」

　留美の声は、怒りに震えていた。

「立派な人？」

　神人が鼻でう。

「じゃあ、なぜ、世の中が平和にならないんです？　なぜ、未だに人間同士で争いが絶えないんですか？　なぜ、自然を破壊するのをやめようとしないんですか？　確かに、留美さんの言うように、立派な人間は沢山いるでしょう。だけどね、残念なことに、権力を握っている人間には、そんな奴はいないんです。いや、権力を握ったら、人は変わるといった方が正解かな。どちらにせよ、いくら立派な人間が沢山いようとも、無力だったら、いないのと同じですよ」

　これまでになく、神人が真剣な口調で言い返してきた。

「今の世の中を見てごらんなさい。世界中に人種差別が蔓延し、国々は資源や領土を奪い合って争っている。限りある資源を枯渇するまで絞りつくして、後世に残そうともしない。科学の発展を競い合う陰でオゾン層を破壊し、永久凍土や南極や北極の氷を溶かし、天候の異変をもたらしている。いくら立派な人間が沢山いようが、どうすることもできない。これが現実なんです。違いますか？　こんなことで、人類が無事に存続していけると、留美さんは本気で思っているんですか？　先のことなんて、これっぽっちも考えていない。口ではエコだ平和だと唱えてますけど、実際に歯止めをかけるのに有益なことは何ひとつしていないじゃないですか」

　神人の目は留美に向けれており、その口調はとても穏やかだった。

「留美さんが、僕の代わりに、犯行声明を出してくれましたよね。その中で、『人類は乗っている船に自ら穴を開けようとしている』とありましたが、それは違います。既に、穴を開けているんですよ。それも、大きなやつをね。そして船は、もう直ぐ沈もうとしている。それなのに、誰も現実を見ようとはせず、次の寄港地に想いを馳せている。人間っていのは、そんな愚かな生き者なんですよ」

　神人の言葉は実に理路整然としていて、的確に世の中の矛盾と問題点を突いていた。三人は咄嗟に言い返す言葉もなく、ただ沈黙を強いられるのみであった。

「神人君。あなたは、自分のことを神だとでも思っているの？」

やっとの思いで、留美が言葉を絞り出した。

「神様気取りなのは、人間の方でしょう」

　また、神人が鼻で笑った。

「ゴキブリや蚊、それにいろんな虫なんかを、人間にとって邪魔だというだけで、害虫と呼んで平気で殺していますよね。彼らは、何も悪いことをしていない。ただ、一生懸命生きているだけなのに。もっとタチが悪いのは、毛皮やバッグなんて生きていくのに何の必要もないくだらない物のために、どれだけの動物が絶滅に追いやられたことか。生活の向上のためとか言いながら、多くの森林を伐採し、焼き尽くす。山を切り崩し、海を埋め立てる。そこで生きている動植物のことなどは、一切考えない。そんなことをする権利が、人間にあるんですか？」

　神人の言っていることは、留美も認めざるを得なかった。なぜなら、日頃留美も心を痛めていたことばかりだからだ。それ以上、留美は何も言い返すことができなくなり、黙って俯いてしまった。

「そんなことを平気でしているくせに、自分たちの生活を脅かすものは、神だの悪魔だのと言って騒ぐ。いいですよ、何とでも好きに呼べば。僕は、そんな人類に罰を与えるためなら、神にだって悪魔にだってなります。地球は、人間だけのものじゃない」

　神人に、勝ち誇った様子は微塵もなかった。深い湖のような澄んだ目で、俯いた留美を見つめている。

「お前は間違ってる」

　沈黙した留美に代わって、津村が言い返した。

「人間が地球にとっての癌やから、罰を与える？　人類を救うためやったら神にも悪魔にもなるやて？　罪もない大勢の人を殺しておいて、自分はいいこちゃんになろうってか？　お前のやっていることと、ゴキブリを害虫と呼んで殺している人間と、どこがちゃうねん。さも正しそうな理屈をならべとるがな、結局、お前のやってることは、お前が言う、愚かな人間と同じやないか」

津村の言葉で、それまで神人の被っていた仮面に皹が入った。笑顔が消え、目が吊りあがり、眉がピクピクと震えだす。

　ＣＩＡが開発したカプセル型爆弾（コードネーム：マジックＱ）が、内部の裏切り者の手により盗まれ、東京に渡る。裏切り者は、マジックＱを赤い金貨という犯罪組織に売り渡そうとしていた。ＣＩＡの大物ヒューストンは、マジックＱの奪回を、今は民間人の悟と結婚して大阪に住んでいる、元ＣＩＡの凄腕のエージェントであった、モデル並みの美貌を持つカレンに依頼する。

加えて、ロシア最強の破壊工作員であるターニャも、マジックＱを奪いに東京へ現れる。そして、赤い金貨からも、劉という最凶の殺し屋を東京へ送り込んでいた。

その情報を掴んだ内調は、桜井という、これも腕が立つエージェントを任務に当てた。

カレンとターニャと劉、裏の世界では世界の三凶と呼ばれて恐れられている三人が東京に集い、日本を守るためにエリートの道を捨て、傭兵稼業まで軽軽した桜井を交えて、熾烈な戦いが始まる。

　裏切者は誰か、マジックＱを手にするのは誰か。東京を舞台に繰り広げられる戦闘、死闘。

　最後には、意外な人物の活躍が。

歩きスマホの男性にぶつかられて、電車の到着間際に線路に突き落とされて亡くなった女性。早くに両親を亡くし、その姉を親代わりとして生きてきた琴音は、その名から逃げ去った犯人に復讐を誓う。

姉の死から一年後、ふと�
�たことから、犯人の男と琴音は出会うことになる。

複数の歩きスマホの加害者と被害者。

歩きスマホに理解を示す人と憎悪する人。

それらの人々が交差するとき、運命の歯車は回り出す。

2018年お正月特別版（前後編）

これまでの長編小説の主人公が勢揃い。

オールスターキャストで贈る、ドタバタ活劇。

大手の優良企業に勤めていた杉田敏夫。

将来安泰を信じていた敏夫の期待は、バブルが弾けた時から裏切られた。家のローンが払えず早期退職の募集に応募するも、転職活動がうまくいかず、その頃から敏夫は荒れて、家族に当たるようになった。
そんな時、敏夫は不思議な体験をする。
幻のようなマッサージ店で、文字のポイントカードをもらう。　
そこに書かれた文字の意味を理解する度に、敏夫は変わってゆく。
すべての文字を理解して、敏夫は新しい人生を送れるのか？　
敏夫の運命の歯車は、幻のマッサージ店から回り出す。

夜の世界に慣れていない、ひたむきで純粋ながら熱い心を持つ真（まこと）と、バツ一で夜の世界のプロの実桜（みお）が出会い、お互い惹かれあっていきながらも、立場の違いから心の葛藤を繰り返し、衝突しながら本当の恋に目覚めてゆく、リアルにありそうでいて、現実ではそうそうあり得ない、ファンタジーな物語。

ふとしたことから知り合った、中堅の会社に勤める健一と、売れない劇団員の麗の、恋の行方は？

会社が倒産し、自棄になっていた男の前に現れた一匹の黒い仔猫。

無二の友との出会い、予期せぬ人との再会。

その仔猫を拾ったことから、男の人生は変わっていった。

小さな命が織りなす、男の成長と再生の物語。

奥さんが、元ＣＩＡのトップシークレットに属する、ブロンド美人の殺し屋。

旦那は、冴えない正真正銘、日本の民間人。

そんな凸凹コンビが、ＣＩＡが開発中に盗まれた、人類をも滅ぼしかねない物の奪還に動く。

ロシア最凶の女戦士と、凶悪な犯罪組織の守り神。

世界の三凶と呼ばれて、裏の世界で恐れられている三人が激突する。

果たして、勝者は誰か？

奪われた物は誰の手に？

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