ゼルダ激安情報

The Shape of Water（2017 アメリカ)

監督：ギレルモ・デル・トロ

脚本：ギレルモ・デル・トロ、ヴァネッサ・テイラー

製作：ギレルモ・デル・トロ、J・マイルズ・デイル

音楽：アレクサンドル・デスプラ

サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ、オクタヴィア・スペンサー

①大好きな映画です！

時々、オープニングシーンを観ただけで、「あ、この映画好きだ」と確信する映画があります。

これもその一つ。青い水の中に灯る不思議な光、そこから吸い込まれていく水中の廊下、家具がぷかぷか浮かぶ水中の部屋。

そこにかかる音楽。甘くて懐かしい旋律、まるで水の中でレコードが鳴っているような。

そして印象的なナレーション。「声を失った王女様の話をしよう…」

目覚まし時計が鳴って夢から覚めて、イライザの平凡な日常が軽快なリズムを刻み始める…。

独特の美術で彩られた画面は美しく、魅力的な絵のようにずっと見ていたくなります。

イライザが住んでいる部屋、その細かな設定一つ一つが見て楽しい。この部屋は映画館の上！にあって、往年のハリウッド映画「砂漠の女王」の音声が、床を伝ってモゴモゴと聞こえてきている。

映画館の上に住むという、映画好きなら誰しも憧れるシチュエーション。

靴にブラシをかけたり食事を用意したりの身支度が、歌うようなリズムでテンポよく描かれていく。この映画はミュージカルではないけれど、音楽のリズムで全体が刻まれています。それがとても気持ちいい。

そして、描写のすべてに意味がある。流れの中でイライザが風呂の中で自慰をするドキッとするシーンが挟まれているんだけど、これも後の展開への伏線になっています。

映像、音楽、そしてリズム。映画に必要なそれぞれの要素が理想的に結合していて、本当にただ観ているだけで多幸感に包まれてしまいます。

出来が良いとかテーマがどうとか以前に、ただただ自分にとって気持ちがいい。

映画って主観的な体験だから、ハマるかどうかはやっぱりそこですよね。自分にとって、気持ちがいいかどうか。

「シェイプ・オブ・ウォーター」は僕にとっては本当に心地よい映画体験でした。主観的な話で何なんですが、ハマる人はばっちりハマる映画なんじゃないかと思います。

②被差別者の抵抗と、差別のない世界

テーマも魅力的です。

ギレルモ・デル・トロ監督の映画はこれまでもそうでしたが、今回もテーマが一貫しています。

抑圧する強者への、弱者の反乱。

自由と尊厳を踏みにじる権力者を絶対的な悪として、虐げられる者の精一杯の抵抗を描くこと。

主人公たちの側は、全員がなんらかの社会的弱者。日陰暮らしを強いられている、被差別者たちです。

口が聞けず、孤児であるイライザ。

貧しい黒人女性であるゼルダ。イライザとゼルダは立場は違えど、ともに差別される階層にあって、掃除婦のような職業しか選べない状況にあります。

時代遅れの画家であるジャイルズはゲイでもあって、誰にも理解されない寂しい暮らしを余儀なくされています。

そしてその中心にいるのが、人間でないもの。アマゾンからやって来たクリーチャー、半魚人。モンスターです。

障害者、黒人、女性、性的少数者、そしてモンスター。

普通と違っていること、異質であることが差別を生み、迫害に繋がる。ここでのモンスターはまさに、差別を受ける異質な存在の象徴です。

フランケンシュタインやキングコングの昔から、モンスターはそういう存在だと言えます。人々に恐れられ、憎まれ、追い詰められて殺される存在。

そのような古典的なモンスター映画の伝統を踏襲しながら、モンスターを守る側に同じく差別される人々を配置することで、より今日的なテーマに繋げています。

古典的映画では、モンスターはどこまでも恐れられ、憎まれる存在でした。

フランケンシュタインやキングコングは最後に殺されることで観客に同情されるのですが、それでもモンスターの死は「仕方のないこと」として受け止められていました。

なぜって、醜いから。外見が普通と違っていて、不気味だから。

でも現代では、もうそこから受け取り方が違っています。

全身をウロコに覆われた半魚人は、決して醜い存在ではない。むしろ、人間よりも美しい存在です。

見た目が我々と違っているものを、恐れるのではなく、同情の目で見下すのでもなく、ごく自然に、当たり前に美しいと感じること。

この映画は、そういう革新的なものの見方を観客に促す映画になっています。

デル・トロ監督のインタビューでの発言が印象的でした。

「僕は『美女と野獣』が好きじゃないんだ。人は外見じゃないというテーマなのに、なんでヒロインは美しい処女なんだ？　なんで野獣はハンサムな王子様になるんだ？」

まったくその通りですよね。外見じゃなく中身の美しさが重要だと言いながら、主演は美男美女。それは観客がそうであることを求めるから…というのがずっと言い訳だったんだけど、それがようやく変わって来た。

真の意味で、愛は外見じゃないんだということ。

常識や他人の目にとらわれず、どんな相手でも愛していいんだということ。

古典的モンスター映画の様相をまといながら、正に最先端の、今日的なテーマを描いている映画だと思います。

③現代批評に繋がる抑圧者の描き方

そんな彼らの対極に位置づけられているのが、威圧的な軍人のストリックランド。常に偉そうで、掃除婦を見下し、サディストで、小便の後で手を洗わない。

彼は理由もなく、電気ショック棒でモンスターを痛めつけます。いや、彼の中では理由はある。それは相手が人間じゃなく、醜いモンスターだから。

つまりこれが、典型的な差別者の論理ですね。

人間じゃないから痛めつけていい。

白人じゃないから。男じゃないから。アメリカ人じゃないから。どこまでも拡張されていきます。

わかりやすい悪役で、観客の憎悪を一身に集める役回りのストリックランドですが、だんだんと彼は自分自身の「こうあるべき」という呪縛によって追い詰められていきます。

上司である将軍にいいように利用され、一度でも失敗したら切り捨てられる。そんなひどい扱いを受けているのがわかっていながら、そこから抜けられない。

自分で自分を不幸にしていく負の連鎖から逃れられず、破滅へ着き進んでしまう。

当たり前のようにモンスターを痛めつけ、異質なものの価値を一切理解しようとしないストリックランドは、トランプ大統領に象徴される現代の偏狭な価値観の象徴なんでしょうね、やっぱり。

そういう価値観では幸せにはなれず、結局自分を不幸にするだけ。ストリックランドはそんなメッセージを担っていると言えそうです。

大アマゾンの半魚人(1954)予告

④奥深い引用と象徴

いたるところに散りばめられた様々な引用、象徴も興味深かったです。

イライザが映画館の上に住んでいて、階下でずっと映画がかかっている上に、隣人のジャイルズはミュージカルファンで、小さなテレビでずっと往年のハリウッドのミュージカルを観てるんですね。

これらの「古き良き娯楽映画」の引用が本作全体のトーンも決めていて、現代のモンスター映画であってもどこか穏やかな、クラシックな上品さを醸し出しています。

セックスシーンや自慰シーン、暴力シーンがあっても、下品でない。全体の美しさの中で調和している。

バスルームでのラブシーン、雨の中のクライマックス、そして水中シーンなど、絵作りがきれいで品があるんですよね。古典のような作り込まれた美しさがあります。

クリーチャーは「大アマゾンの半魚人」から。映画にアマゾンは出てこないけれど、この映画のイメージから、アマゾンの深く広い淵で優雅に泳ぎ回るクリーチャーの姿を容易に想像することができます。

研究所の狭いポッドや浅いプールの中に鎖をつけて閉じ込められたクリーチャーの向こうに、アマゾンでの自由な様子を思い描くことができる。だから彼が囚われている理不尽さ、自由への渇望がより切実なものとして受け取れる。

そして、全体のモチーフはおとぎ話です。

川で拾われ、口の聞けないイライザは声と引き換えに人間になった人魚姫ですね。

全体に満ちる水のイメージ、イライザが常に水にひかれてくイメージは、このモチーフから導かれています。

だからこれは「大アマゾンの半魚人」の後日談であると同時に、「人魚姫」の後日談でもある。

そんなふうにいろんな意味が散りばめられていて、それを読み解いていく楽しみもあります。

何度も繰り返し観ても、発見があるんじゃないでしょうか。僕ももう一回観たいです。

原典「大アマゾンの半魚人」は3D映画でもありました。

評価の高いギレルモ・デル・トロ監督作。僕は「シェイプ・オブ・ウォーター」の方が好き。

どうも、やしろあずきです。

Twitterのほうでも言いましたが、今回のTwitter凍結騒動で色々助けてくださった皆様、本当に皆様ありがとうございました。

そして待っていてくださっていたフォロワーの皆様も、本当にありがとうございます。

Twitterのほうは先日金曜の朝、無事に解凍されました。

ちょうどその日の夕方にオプエド出演の予定があり、このまま解凍されなかったら死んだ魚のような目をしながらメディアに出なきゃいけないのか…とか思いながらゼルダをしていたのですが、本当に良いタイミングで解凍されてよかったです。最高。

今回の件については、まだ諸々動いていますし、驚くような進展などもありましたので、また（言えそうなら）ここやTwitterのほうで書いていきたいと思います。

言ったら僕が社会的に封殺されそうな場合は言いません。大人なので。

という訳で今後はいつも通り、色々面白いことをやったり描いたりしていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします！

しかしTwitter以外にも何か並走してやっておいたほうがいいよなぁ…

アメブロも勿論、Facebookとかインスタとかyoutubeとか…何かしらに手を広げたいなと思っています。はい。

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なお、舞台挨拶は２３時からみたいです。俺は多分家に帰れない。

今日は読者登録ボタンをうざいぐらいにつけて終わりにしたいと思います。では！

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