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舟を編む (三浦 しをん 著)
おはようございます
昨日、一昨日とインフルエンザ後の仕事で疲れたのか、夜は即寝でしたが、楽しく働いています
今日は久しぶり(いつぶり)に純粋な本レビュー記事です
↑読書レビューブログなのに…
三浦しをんさんの著作のレビューは初めてですが、読んだ作品としては三冊目です。
前二冊はいまひとつ波に乗れず、「三浦しをんさんは私には合わないのかな…」と若干の寂しさを感じていました…
そんな経緯があり「舟を編む」は、広辞苑に夢中になった幼少期を思い返して気になりつつも、手を伸ばすのを躊躇していました。
けれどブックオフでセールをしていて、えいっ、と購入。
積ん読になっていたのをインフルエンザの安静期間中に読み始めました。
結果…、面白い
と、なりました
【ストーリー】
定年を数年先に残しながら、妻の療養のため早期退職を決めた荒木。
子どもの頃から言葉に興味を持ち、叔父からもらった辞書により更に言葉の奥深さを知って、辞書編集の道へと進んだ荒木の人生は、辞書に捧げられた人生でした。
共に辞書を作ってきた松本先生に惜しまれながら会社を去ることを決めた荒木には、ひとつだけ心残りなことがありました。
それは、新しく編纂される辞書『大渡海』でした。
自分に代わり、『大渡海』の編纂を託せる人物かいないかと社内を探し求めているとき、辞書編集部の部下・西岡から有力そうな人材の話を聞きます。
どんな人物か訪ねていくと、優れた語学センスを持ち、辞書に必要な美意識を持った馬締(まじめ)という27歳の男性社員でした
「『大渡海』に君の力を注いでほしい」と告げる荒木に馬締はまじめに応えます。
「あ〜あぁ〜!」素っ頓狂な声を張り上げ、「はってっし〜な〜い〜」と、社内で周りが一斉に振り返るほどの声量でクリスタルキングの『大都会』を歌い出したのでした。
一瞬呆然としたのち、馬締の勘違いに気付き、慌てて止める荒木。
そんな初対面でしたが、荒木は馬締の語学センスと美意識を買い、辞書編集部にスカウトすることにし、馬締は『大渡海』の編纂に関わることになるのでした。
書き出しから素敵でした。
荒木の少年時代の言葉に対する興味を示すエピソードとしての【犬】。
ここにいるのにいぬ。からはじまり、スパイを意味する犬、「無駄」という意味で使われる犬死など、言葉の持つ多彩さを初めに読者に提示し、強烈な個性を放つ馬締を登場させるくだり。
馬締に語りを変え、馬締の変人さを物語る「下宿先に本を置きすぎ、大家を一階から二階に転居させる」というエピソード。
馬締に対し、「滅茶苦茶や!」と思わず突っ込みながら先を読み進めました。
西岡と馬締の対比を通し、仕事への取り組み方を通して色々な人生の歩き方が描かれます。
馬締がもっと傍若無人なタイプかと思っていたのですが、「割と普通」と思ったのは私も変わっているからなのか…
馬締の“言葉”について考えてどこかに意識がいってしまう感覚は、内省の世界に入った時の自分を考えるとよく理解できたり…。
昭和の文豪のように一人の世界に入り、黙々と辞書編纂に取り組み、妻となるひとがそれを支える物語なのかと思っていたのですが、良い意味で裏切られました。
馬締は様々なひとに陰に日向に助けられ、辞書編纂の道を歩んでいきます。
馬締が周囲に愛されるのは、頓珍漢ながらひとへの思いやりがあるからだと思います。
馬締は言葉に真摯に向かいあっており、嘘をついたり、要領よく立ち回ったりすることができません。
その馬締のまじめさが周囲の人々の気持ちを動かします。
ある登場人物の言葉です。
「私は十代から板前修業の道に入りましたが、馬締と会ってようやく、言葉の重要性に気付きました。馬締が言うには、記憶とは言葉なのだそうです。香りや味や音をきっかけに、古い記憶が呼び起こされることがありますが、それはすなわち、曖昧なまま眠っていたものを言語化するということです」
馬締は物語を通し、言葉の魅力を読者にも伝えてくれます。
馬締と関わるなかで、仕事に対しても、人間関係など生活全般に対しても、「ほどほど」「適当に要領よく」やっていた西岡が変わります。
馬締を思い行う後方支援にも、優しい気持ちになれました。
馬締と西岡の辞書編纂における苦労が描かれるかと思いきや、場面は一気に変わり、十数年後に場面は飛び、馬締を支える主要人物も代替わりします。
主要人物が変わることで、客観的な視点から物語が語られ始めます。
馬締は、「適所」に巡り会えたこと、「ひとを好きになること」で、自分以外にも興味を持つようになり、成長していきます。
序盤の滅茶苦茶さが楽しかったので、馬締が社会に溶け込んでいくことに若干の寂しさも感じましたが、それは馬締の成長の表れであり、ひとと繋がることの意味を表しているのでしょう。
馬締にしても西岡にしても「自分にないもの」に相手と接するなかで直面し、自分の至らなさに思いが向きます。
もっと屈折して、相手を貶めることで自分を保持しようとする描写があったり、「自分の在り方」についての葛藤がもう少し描かれてもいいのかな、と思いましたが、テンポの良さを考えると、ライトな感覚で読めるこの描き方が良いのかな、と思い直しました。
「自分になくて相手にあるもの」を認められる素直さが物語のなかに明るさをもたらし、最後まで物語に引き込まれて読み終えました。
「舟を編む」は、彩ふ読書会の課題本としても取り上げられています。
東京、大阪での開催レポをのののさんが書かれていますので、よろしければこちらもご覧ください
10/7大阪開催「舟を編む」レポ
最近、「物語を純粋に楽しむ」ということが難しくなってきました。
つい現実と照らし合わせてしまい、また、日々の関心事が現実的なことにあることから、自己啓発的な本や随筆、エッセイといった誰かの思想が覗けたり、自分自身が「考える」きっかけになる本を読むことが増えてきました。
けれど、やっぱり優れた物語は惹き込まれるし、面白いと感じさせてくれる一冊でした
「舟を編む」は2012年の本屋大賞ですが、今年もエントリー作品が発表されましたね
昨年の大賞「かがみの孤城」も面白かったので、今年もどんな作品が選ばれるのか楽しみでした。
気になる作家さんがたくさんノミネートされています。
三浦しをんさんも今年もノミネートされています。
惜しくも直木賞を逃した森見登美彦さんの「熱帯」もノミネートされていました。
瀬尾まいこさん、伊坂幸太郎さんの著作も読んでみたいと思っていたので、これを機に著作に触れてみたいと思います。
基本的に小説は文庫本で購入するか図書館なので、旧作になると思いますが…。
さて、今日も仕事。
楽しみながら頑張ってきたいと思います。
それでは、また
良い一日をお過ごしください
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自分の引退とともに演劇部を解散するという渉。意見を覆すには、代々伝わる部長の証しを渉から引き継ぐ必要があり… #あんスタ https://t.c…
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